『少年のアビス』作品紹介(あらすじ・みどころ)

漫画紹介

漫画『少年のアビス』とは

題名:『少年のアビス』

作者:峰浪りょう

出版社:集英社

掲載雑誌:週刊ヤングジャンプ

巻数:既刊8巻(2022/6/10現在)

『少年のアビス』あらすじ

黒瀬令児(くろせれいじ)、高校3年生。

彼は母、兄、祖母と4人暮らしをしていました。

兄は引きこもり、祖母は認知症、そして看護師の母が何とか生活を支えている状況です。

そんな家庭環境で育った令児は、学校の進路希望調査で、「大学進学」ではなく「就職希望」と記入し提出していました。

担任の先生からも心配されて呼び出されますが、令児は自分の環境にどこか諦めもついているようで、就職希望の意志は変わりません。

さらに、令児には幼馴染が2人いるのですが、その内の1人・峰岸玄(みねぎしげん)からはいつの日からかパシリのように扱われていました。

そんな令児には一つだけ夢中になっているものがありました。

それは、もう一人の幼馴染・チャコに勧めてもらった女性アイドル「アクリル」の存在です。

「アクリル」とは東京で活動しているアイドルグループで、その中でも「青江ナギ」はこれから注目されていくと言われているアイドルです。

厳しい家庭環境の中、田舎で暮らし続けている令児と、キラキラとした衣装で輝かしい活動をしているアイドル・青江ナギ

一見対極の位置にいるように思われる二人ですが、ある日を境にこの2人の運命の道が交わることになるのです

それは、令児が幼馴染の峰岸玄にいつものようにパシリとして煙草を買いに行くように命令された日のことでした。

令児はコンビニで煙草を注文しますが、店員から「制服の方にはお売りできません」とはっきり断られてしまいます。

煙草を買うのを断られた経験のない令児は驚きますが、大人しく引き下がります。

煙草を買えなかったことを峰岸玄に報告すると「次は三箱買ってこい」と責められます。

そして帰宅すると、お漏らししてしまっている認知症の祖母や、母に怒鳴る引きこもりの兄。

母からは「令児がいなかったら死んでる」と重たい言葉をかけられます。

しかし、これは令児にとって日常茶飯事です。

いつものことだと割り切って、兄に怒鳴られた母の代わりに買い出しに行く令児。

先程のコンビニに寄ると、煙草の購入を拒否した店員がゴミ出しをしていました。

何気なくその様子を見ていると、その店員は煙草を吸い始めました。

そして、令児がいることに気付いた店員は、煙草を一本令児の前に差し出します。

先程は煙草の購入を断られたのに妙だと感じましたが、その店員は「今のあなたは私服だから」と言います。

煙草を買いに行った時は制服だったため、令児が未成年であることは店員も理解しているはずですが、令児はその店員から煙草を受け取ります。

そして、火の点いたライターに煙草を近付けようとした時、火の光で店員の顔がはっきり見えました。

その瞬間、令児は息をのみます。

なぜなら、その店員はあの「アクリル」の青江ナギだったからです

「何でこんな田舎に青江ナギがいるのだろうか。」

あまりの出来事に固まる令児でしたが、少しずつ冷静さを取り戻し、青江ナギと会話をします。

なぜこの町に来たのかは教えてくれませんでしたが、最近この町に引っ越してきたようで、青江ナギから町の案内を頼まれます。

青江ナギの大ファンである令児は、もちろん町の案内を引き受けます。

憧れの青江ナギを連れて町の中を案内する令児でしたが、ある川の前で立ち止まります。

その川は「情死ヶ淵」という名前で、江戸時代に心中した男女の物語を描いた、とある小説で有名になった川でした。

出典 少年のアビス コミックス第1巻より

そして青江ナギはその川の場所で、驚くことを言ってきました。

「今から一緒に心中しよう」と—–

『少年のアビス』みどころ

この漫画のみどころは、なんといっても「巧みで繊細な心理描写」だと思います。

主人公の黒瀬令児は家族や幼馴染との関係に疲弊しています。

しかし、家族や幼馴染などは日常生活から切り離せないものであり、令児はこの環境から逃げることもできません。

その枷になっているのは、母親と幼馴染の峰岸玄。

認知症の祖母と引きこもりの兄の生活を支えている母。

家族という繋がりがある以上、立場的な意味でも情的な意味でも母は祖母と兄を見捨てることはできないでしょう。

それは、そんな母の姿を長年見てきた令児にも同じことが言えると思います。

そして、幼馴染の峰岸玄。

令児・玄・チャコの三人が出会ったのは小学生の頃。

いじめられているチャコを庇った令児もいじめのターゲットになってしまい、それを助けてくれた玄。

しかし、成長と共に玄はガラの悪い人たちとつるみだし、令児をパシリにしてくるようになりました。

小学生の頃の借りもあり、令児はそんな玄からの命令を拒むことができずにいました。

令児は家族と幼馴染の枷にとらわれ、身動きのできずにこの田舎で腐っていくことを自分でも自覚しながら過ごしていたのです

そんな令児の運命を変えたのがアイドル・青江ナギ

アイドルという言葉だけを聞くと、令児とは反対に、キラキラとした生活を送っているように思えます。

しかし、この漫画の面白いところは、青江ナギも心に何か闇を抱えている人間であるということです。

初対面の令児に対する「一緒に心中しよう」と言う言葉。

アイドルというキラキラした姿の裏側で何があったのでしょうか。

青江ナギは、表面上は穏やかに過ごしている令児がこの腐った場所で身動きを取れずにいることも察してくれます。

お互い心に闇を抱えている分、通じ合うものがあったのでしょう。

出典 少年のアビス コミックス第1巻より

そんな青江ナギと心中することになるのですが、タイミングが合わず心中自体は後に持ち越されることになります。

その中で青江ナギと初体験を済ませた令児が幼馴染・チャコの身体に欲情する場面があり、人間の欲をリアルに表現していると思いました。

また、よくある漫画の展開だと主人公とヒロインがくっつくというお決まりの流れになりますが、この漫画はそんな単純な物語には見えません

関わりを続けていくうちに、青江ナギには夫がいることが判明します。

しかも青江ナギは「令児と一緒に心中したい」のではなく、「誰かと一緒に心中したい」という気持ちのため、令児に執着する様子も見せません。

令児が心中をためらうと、「じゃあ私は一人でいくね」とあっさりした態度を取る場面もあります。

今後の展開によっては令児と青江ナギが恋愛感情をもつ可能性もありますが、そうなったとしてもこの漫画のテーマは「恋愛」ではないと思います。

人間同士の関わりをリアルに表現し、「死」という観念も通しながら、人間が生きる意味を描写しているのだと感じました

出典 少年のアビス コミックス第1巻より

リアルな人間関係や、巧みで繊細な心理描写が好きな人には自信をもっておススメできる一冊です!

『少年のアビス』こんな人におすすめ

□綺麗な漫画の絵が読みたい人

□リアルな心情描写の漫画を読みたい人

□人間や社会の闇がテーマの漫画を読みたい人

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